中小企業診断士の視点:創業全国3番目の老舗百貨店が自己破産

創業全国3番目の老舗百貨店が自己破産

創業したのが全国3番目の老舗百貨店が自己破産しました。

百貨店の経営が厳しいのは、いまに始まったわけではなくかなり昔から厳しかったのです。

今日は、創業全国3番目の百貨店が自己破産したという新聞記事を見たので、その話です。

この記事を読むと、百貨店経営の厳しさがわかります。

中小企業診断士の視点:創業全国3番目の老舗百貨店が自己破産

記事の内容

  • 自己破産した百貨店
  • 百貨店の外部環境
  • 百貨店の内部環境

この記事は中小企業診断士で一級販売士のKAZUTOYOが書いています。

自己破産した百貨店

  • 山形県の「大沼」百貨店

自己破産した百貨店は山形県の「大沼」百貨店です。「大沼」百貨店は1700年創業で、松坂屋、三越に次ぎ全国3番目にできた老舗の百貨店です。

この破産で「大沼」百貨店は本店など全3店舗を閉店することになりました。これにより山形県は日本百貨店協会加盟のデパートがない全国初の都道府県となるということです。

負債総額は約30億円で、従業員191人を解雇したようです。

百貨店の外部環境

  • 以前から外部環境は厳しい

百貨店の経営環境は以前から厳しかったのですが、それを見ていきます。

スーパーの出現

百貨店を取り巻く経営環境はかなり昔から厳しいものとなっていました。それは1960年~1970年代にダイエーなどのスーパーが台頭してきた頃から続いています。

スーパーは安さを武器に、お客様を獲得していきました。当時のダイエー中内社長はアメリカの小売業を研究し、そのやり方を日本に導入して成功したのです。

セルフサービスを基本として、ローコスト経営を可能にし、低価格でも利益を得らえる経営の仕組みをちゃんと作っていたのです。

新規業態チェーンの出現

その後は、家具、衣料品、電気製品の専門チェーン店なども勢力を増してきて、従来百貨店で販売していたカテゴリーの売上をどんどん奪っていくようになったのです。

インターネット通販の出現

最近は、インターネット通販とも競争しなくてはいけない環境となっていました。

ちょっと前に話題になったZOZOなども競争相手です。

アマゾンとも競合します。

以上のように、長期に亘って新業態の店舗、インターネットのバーチャル店舗などと競合し、その結果が今の低迷する百貨店業界の姿なのです。

百貨店の内部環境

  • 高コスト、マーチャンダイジング(商品計画)が弱い

百貨店は、もともと経営的に利益を上げにくい構造だったのです。その理由のいくつかを見ていきます。

委託販売

まずは委託販売です。

委託販売のメリット

委託販売は、メーカーや問屋などの仕入れ先企業に売り場を貸して商品を販売することです。

委託販売のメリットは在庫を抱えるというリスクがないことです。

売れない商品は、メーカーや問屋などに商品のチェンジを依頼すれば済みます。

委託販売のデメリット

儲けが少ない

ただし、委託販売は普通の買取り仕入より粗利益額が低く設定されているので、リスクはないのですが、儲けは少ないという商売のやり方なのです。

従業員が育たない

また、従業員は商品仕入に責任を負わなくても良いので、商品選びを真剣にしなくなります。

売れなかったら、他の商品に入れ替えてもらえば良いと安易に考えるからです。

それとは逆に買取り仕入は、仕入担当者は自分の仕入れに責任を負わされます。買取りの基本は仕入れた商品は売り切らなければいけないからです。

となると、仕入の時も真剣に慎重に商品を選別するようになります。それを積み重ねていけば、売れる商品、売れない商品についての目利きが身につくようになるのです。

委託だと、このような目利きが身につくことはありません。

百貨店の競争力が弱くなったのは、この委託仕入にも大きな原因があると考えています。

バイイングパワーが相対的に小さい

山形県の「大沼」百貨店は全店舗で3店舗です。

でも競合する大手スーパーはどうでしょうか。有名なスーパーは全国展開のチェーン店です。

大量仕入れ、大量販売が可能な店舗です。仕入れ価格も安いのです。

デパートは基本規模が小さいので、バイイングパワーは小さいのです。仕入価格も大手チェーンとは当然差が出てくるのです。

この意味でも、利益を上げにくい経営体質なのです。

バイイングパワーについては、当ブログ「中小企業診断士の視点:バイイングパワーとは?」で書いています。

よろしかったらご覧ください。

接客販売は高コスト

また、百貨店は接客販売が従来の販売方法でした。来店したお客に販売員がつき商品説明などをして購入してもらう方法です。

一方、スーパーはセルフ販売です。

どちらがコスト高かというと、当然接客販売です。

以上のように、もともと百貨店はコスト高のビジネスなのです。

また、委託販売は在庫負担のリスクはないのですが、仕入れ担当者の商品選びの能力が育ちにくいなど問題がありました。

それらが組み合わさって他の業態と比べると競争力が低下していったのではないでしょうか。

まとめ

  • 自己破産した百貨店

自己破産した百貨店は山形県の「大沼」百貨店です。「大沼」は1700年創業で、松坂屋、三越に次ぎ全国3番目にできた老舗の百貨店です。

  • 百貨店の外部環境

以前から外部環境は厳しい

  • 百貨店の内部環境

高コスト、マーチャンダイジング(商品計画)が弱い

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。