中小企業診断士の視点:日本的労務管理とは

日本的労務管理とは

最近は日本的な雇用管理の特徴であった終身雇用制や年功序列制が崩壊し始めています。

昔は、こうした制度のおかげで、いったん会社に入れば「のほほん」としていてもなんとかなったのですが、現在はそうはいかなくなりました。

中小企業診断士の勉強では、日本的労務管理の特徴について主に3つ学びました。今回はその日本的労務管理の3つの要素についての話です。

ですが、もうしばらくすると「過去にはこのような制度がありました。」などとなっていると思います。

この記事を読むと、従来の日本的労務管理の3つの要素についてわかるようになります。

日本的労務管理とは

記事の内容

  • 終身雇用制
  • 年功序列制
  • 企業別労働組合
  • 日本的労務管理の欠点が表面化

この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。

終身雇用制

  • 現在は崩壊しつつあります

日本特有の雇用制度や慣行による労務管理を日本的労務管理といいます。

まず、最初は終身雇用制です。現在は崩壊しつつありますが、終身雇用制は日本の労務管理の特徴ともいえるものでした。

終身雇用制は従業員を定年年齢に達するまで特別の場合を除いて解雇することなく継続して雇用する慣行です。

終身雇用制は従業員に雇用の安定をもたらし、長期的な生活設計を可能にしていました。

従業員の長期住宅ローンを利用しての住宅購入も、終身雇用制があったので安心してできたのです。

年功序列制

  • 年功昇進制度と年功賃金制度からなります

年功序列制は従業員の年功を主な指標として職場の秩序を確立しようとする制度です。

年功序列制は、年功昇進制度と年功賃金制度の2つ要素からなります。

年功昇進制度は、従業員の年齢、学歴、勤続年数などに基づき、昇進を決めていく制度です。

年功賃金制度は、勤続年数の増加にしたがって賃金を上げていく制度です。

従来、日本の労働者は若いうちは働きぶりに関係なく賃金が低いのが一般的で、40代後半から50代にかけて賃金が高まっていくようになっていました。

同じような仕事内容であったとしても、年功者のほうが給料は高いということになっていたのです。

このような年功序列的な制度は、我が国特有の終身雇用制度を前提に、長期的で安定した従業員の評価を可能にしていました。

企業別労働組合

  • 企業ごとに組合がある

日本では、企業ごとに組織化された労働組合があります。最近では企業の枠を越えたユニオンのような組合もありますが、それは例外です。日本の場合、労働組合は企業ごとにあるのが普通です。

一方、欧米の労働組合は企業の枠を越えて組織される産業別労働組合が主流で、この辺が日本と大きく異なる点です。

従来、日本の労働者は企業別労働組合のため、企業に対する帰属意識が高く、企業との運命共同体として協調した行動をとることがあり、企業の成長にも貢献していました。

日本的労務管理の欠点が表面化

  • 低成長の現在、ほころびが目立ち始めた

日本的な労務管理はかつての高度成長の時代には、企業の成長に伴って労働者にも多くの利益をもたらしました。企業が成長すれば、従業員の賃金も増加させることができたのです。

ですが、現在は低成長の時代です。

低成長時代になると日本的労務管理の欠点が表面化してきました。

終身雇用制は従業員の雇用調整(つまりリストラ)を難しくし、年功序列制は企業が低成長なのに人件費が高まっていきました。企業にとっても負担が大きくなります。

また、若年層の不満も高まり、士気にも影響しています。

こうした背景もあり、現在は終身雇用制と年功序列制に関しては、崩壊しつつあるのです。

まとめ

日本的労務管理とは

  • 終身雇用制

定年年齢に達するまで解雇することなく継続して雇用する慣行です。現在崩壊中です。

  • 年功序列制

年功序列制は従業員の年功を主な指標として職場の秩序を確立しようとする制度です。現在崩壊しつつあります。

  • 企業別労働組合

企業ごとに組織化された労働組合のことです。従業員の企業に対する帰属意識の醸成に役立ちました。

  • 日本的労務管理の欠点が表面化

低成長時代の現在、ほころびが目立ち始めています。

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。