決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る その2
先日、当ブログ「中小企業診断士の視点:決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る」で流動性(安全性)の面から「いきなり!ステーキ」の経営状況を見ました。
今回は第2弾として、収益性の面から「いきなり!ステーキ」の経営状況を見ていきます。
前回の分をまだ読んでいない方は合わせてお読みください。
前回の「中小企業診断士の視点:決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る」はこちらです。
この記事を読むと、「いきなり!ステーキ」の収益性についてわかります。
決算書は㈱ペッパーフードサービスのホームページ経由で入手できます。
「いきなり!ステーキ」の決算書が記載されている資料の入手先はこちらです。(PDFファイルになっています)
当方で決算書の部分だけ取り出したものはこちらです。(PDFファイルになっています)
Contents
決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る その2
記事の内容
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この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。
Jnet-21でおおよその指標について把握する
- 未知の業種業態はJnet-21で調査
Jnet-21という中小企業基盤整備機構が運営している公的なサイトがあります。中小企業基盤整備機構は、日本で唯一の中小企業政策全般にわたる総合的な支援・実施機関で、約358万社といわれる日本の中小企業の経営を支援するために作られました。
Jnet-21は中小企業、小規模企業だけでなく中小企業診断士にとっても役に立つサイトです。
未知の業種業態に関する大まかな内容もこのサイトで調べることができます。
ステーキハウスについても掲載されています。
画像出所:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/restaurant/food13.htmlより
「いきなり!ステーキ」の売上総利益率
- 売上総利益率が低い
「いきなり!ステーキ」の売上総利益率を見ていくと、2018年は42.9%、2019年は41.0%となっています。
一方Jnet-21に掲載されているスキーキハウスの損益イメージは次のようになります。
画像出所:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/restaurant/food13.htmlより
「いきなり!ステーキ」の売上総利益率は標準的なステーキハウスと比較すると、かなり低いことがわかります。
スキーキハウスに限らず、飲食店の売上総利益率は一般に60%前後は必要と思いますが、「いきなり!ステーキ」はかなり低いのです。
「いきなり!ステーキ」は、もともと経営方針が薄利多売ということもありますが、飲食店で40%前後の売上総利益率だと、よほど多くの人を集客できないと苦しい経営になります。
「いきなり!ステーキ」の営業利益率
- 営業利益率がマイナスに転じた
「いきなり!ステーキ」の営業利益率を見ていくと、2018年は6.1%、2019年は▲0.1%となっています。
1年間での落ち込みが大きいですが、営業利益の段階で赤字になっているのが問題といえます。
原因は販売費及び一般管理費にあります。販売費及び一般管理費の額を見ると、2018年が233億4千万円で、2019年は約278億円と売上総利益額がたいして増えていないのにもかかわらず、費用は増大しているのです。
今後、大胆なコストカットをする必要があります。
「いきなり!ステーキ」の経常利益率
- 経常利益率もマイナスに転じた
「いきなり!ステーキ」の経常利益率を見ていくと、2018年は6.1%、2019年は▲0.1%となっています。
営業利益率と同じ数値が並んでいます。
以上の結果、最終的には、2018年は1億2千万円の赤字、2019年は27億円の赤字となりました。赤字額も増大しています。
店を減らして業績を回復するのは難しい
「いきなり!ステーキ」では、業績回復のために多くの店舗を閉店してしのごうとしています。
ですが、店舗の閉店は売上の減少に直結します。ほとんどの既存店が前年マイナスでも、一定の売上を確保していることには間違いありません。一つの店舗を閉店するということは、その店舗の売上が0になるということです。
一方、決算書の借入金を見ると、2018年は長期短期合計で約52億円、2019年は83億円と1年で約30億円も増加しています。
今後、これだけの借入金を返済していくには、もともとの売上を増加させないとかなり厳しくなります。
店舗を閉店することは、その逆をやることになります。
すると、経営はますます苦しくなるのが普通です。
どのように乗り切っていくのか、いまが正念場といえます。
まとめ
決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る その2
未知の業種業態はJnet-21で調査します。
売上総利益率が低い
営業利益率がマイナスに転じた
経常利益率もマイナスに転じた 店を減らして業績を回復するのは難しい。 |