中小企業診断士の視点:決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る

決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る

地元新聞を見ていたら、ステーキ店チェーン「いきなり!ステーキ」が勢いを失っている、との記事を目にしました。

「いきなり!ステーキ」は2013年に東京・銀座1号店の開店後、米国産牛肉を手軽に食べられることや量り売りの方式が人気を呼んで、猛スピードで出店していたのですが、店舗競合で客数が減少しているとのことです。

「いきなり!ステーキ」は上場しているので、決算書は公開されているはずです。

ということで、「いきなり!ステーキ」の会社のホームページから決算書を取り出してみました。

決算書から簡単に流動性の面で経営状況を見ることにします。

「いきなり!ステーキ」の決算書は割とシンプルで複雑ではありません。中小企業診断士を目指す人にとっても見てみると良い勉強になると思います。

この記事を読むと、「いきなり!ステーキ」の流動性の面での経営状況がわかります。

 

決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る

記事の内容

  • 流動性とは
  • いきなり!ステーキの決算書
  • 流動比率
  • 当座比率
  • 固定比率
  • 固定長期適合率
  • 自己資本比率(総資本対自己資本比率)
  • キャッシュフロー計算書を分析

この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。

 

流動性分析とは

  • 短期の支払能力を見る

流動性分析とは貸借対照表における流動資産と流動負債のバランスから、企業の短期的な支払能力を把握するものです。安全性分析とも言います。企業が必要とする資本(資金)の充足度合を示すものとも言えます。

安全性分析(流動性分析)を示す主な指標は、流動比率、当座比率、固定比率(自己資本対固定資産比率)、固定長期適合率、自己資本比率(総資本対自己資本比率)の5つです。

これらの指標についての詳細は、当ブログ「中小企業診断士の視点:企業の安全性(流動性)を示す経営指標」に書かれています。よろしかったらご覧ください。

 

「いきなり!ステーキ」の決算書

  • 決算書はインターネットで入手できます

「いきなり!ステーキ」は㈱ペッパーフードサービスが運営しているチェーン店です。上場しているので、決算書も入手できます。

決算書は㈱ペッパーフードサービスのホームページ経由で入手できました。

「いきなり!ステーキ」の決算書が記載されている資料の入手先はこちらです。(PDFファイルになっています)

当方で決算書の部分だけ取り出したものはこちらです。(PDFファイルになっています)

 

流動比率

  • 50%と100%を大きく割っていて悪い

「いきなり!ステーキ」の流動比率は、2018年は77.6%、2019年は50.2%と100%を大きく割っていて、短期の支払能力に問題があり、悪化していることがわかります。

資金繰りには苦しんでいるようです。

 

当座比率

  • 即時の支払能力もかなり悪い

当座比率は即時の支払能力を示す比率です。

「いきなり!ステーキ」の当座比率は、2018年は59.4%、2019年は31.9%と流動比率同様100%を大きく割っていて、即時の支払能力にも問題があることがわかります。悪化していることもわかります。

 

固定比率

  • 2697%と100%を大きく超えていて悪い

固定比率は固定資産÷自己資本の数値です。この数値が大きいということは、固定資産の多くは借入金などの負債で調達しているということです。

固定比率の理想は100%以下です。

「いきなり!ステーキ」の固定比率は、2018年は360.5%、2019年は2697.6%と100%どころではありません。

しかも1年でかなり悪化していることがわかります。

 

固定長期適合率

  • 286%と100%を超えていて悪い

固定長期適合率は固定比率を甘く見た分析手法です。

式は固定資産÷(固定負債+自己資本)です。

この数値が100%超ということは、1年以内に返さないといけない借入金なども使って固定資産を運用していることを示しています。数値が100%以内なら良いと言えますが、それどころではありません。

「いきなり!ステーキ」の固定長期適合率は、2018年は202.2%、2019年は286.8%とこちらも100%を大きく超えています。しかも悪化しています。

この数値が大きいことは、経営的には危険な状態であることを示しています。

 

自己資本比率(総資本対自己資本比率)

  • 債務超過が目の前に迫っています

「いきなり!ステーキ」の自己資本比率は、2018年は14.4%、2019年は2.5%とこちらもかなりのスピードで悪化しています。

 

債務超過が目の前に迫っている状態です。

第三者割り当てによる新株予約権を発行して資金調達を進めているそうですが、果たしてどうなるでしょうか。

 

キャッシュフロー計算書を分析

  • 借入金でキャッシュを調達しているのが現状

キャッシュフロー計算書は次の3つの部分で構成されています。

  1. 営業キャッシュフロー
  2. 投資キャッシュフロー
  3. 財務キャッシュフロー

以上の3つです。

次に「いきなり!ステーキ」の2019年のキャッシュフローについて見ていきます。

 

営業キャッシュフロー

  • 赤字なのでキャッシュはマイナス

当期純利益はキャッシュの源泉ですが、赤字なのでキャッシュはマイナスです。

減価償却費や減損損失は費用ですが、キャッシュが外にでていくわけではないので、その分をプラスします。

あと、売上債権の回収などもキャッシュのプラス要因です。

いろいろあって、結果的には営業キャッシュフローは、6億円程のキャッシュアウトとなっています。キャッシュの源泉である当期純利益が赤字なので、いたしかたありません。

 

投資キャッシュフロー

  • 固定資産を購入していてマイナス

決算書しか見ていないので、詳しくはわかりませんが、何か固定資産(54億円)を購入してお金を支払っているようです。

その結果、投資キャッシュフローは62億円のキャッシュアウトとなっています。

 

財務キャッシュフロー

  • 長期借入でしのいでいます

営業キャッシュフローと投資キャッシュフローでキャッシュが出ていくばかりなので、財務キャッシュフローでキャッシュを得ていくほかありません。

 

「いきなり!ステーキ」は、長期借入金を返済し、新たに更に長期借入金で資金を調達したことがわかります。今までの長期借入を借り換えて、更に新規の長期借入を行ったようです。

 

それでも2018年にはキャッシュが約67億ありましたが、2019年には約25億と大幅に減ることになりました。

キャッシュの面でもかなり厳しい経営状況となっています。

中小企業診断士の視点:企業の安全性(流動性)を示す経営指標

2020年3月10日

まとめ

決算書で「いきなり!ステーキ」の経営を見る

  • 流動比率

2018年は77.6%、2019年は50.2%と100%を大きく割っていて、短期の支払能力に問題があることがわかります。

  • 当座比率

2018年は59.4%、2019年は31.9%と流動比率同様100%を大きく割っていて、即時の支払能力にも問題があることがわかります。

  • 固定比率

2697%と100%を大きく超えていて悪いです。

  • 固定長期適合率

286%と100%を超えていて悪いです。

  • 自己資本比率(総資本対自己資本比率)

2.5%と債務超過が目の前に迫っています。

  • キャッシュフロー計算書を分析

2018年にはキャッシュが約67億ありましたが、2019年には約25億と大幅に減ることになりました。

キャッシュの面でもかなり厳しい経営状況となっています。

全ての指標が悪く、しかも悪化スピードも速いです。総合的に見ても、かなり厳しい経営状況にあるとわかります。

 

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。