『三陽商会』を中小機構の「経営自己診断システム」で経営診断
そんな疑問に応えます。
今回も、『三陽商会』を中小企業基盤整備機構(中小機構)が無償で提供している「経営自己診断システム」を使って経営診断しました。
どんな結果になるのでしょうか?
中小機構の「経営自己診断システム」のホームページアドレスは以下になります。
http://k-sindan.smrj.go.jp/crd/servlet/diagnosis.CRD_0100
本記事を読むと、『三陽商会』の経営状態がわかるようになります。
Contents
『三陽商会』を中小機構の「経営自己診断システム」で経営診断
本記事の内容
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この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。
- 中小企業診断士としての活動歴10年以上の経験があります。
- 小売業の経営支援経験も多数あります。
決算期の変更
- 3月1日~2月末日に変更
三陽商会では、従来決算期は1月1日~12月31日までの1年間でしたが、2019年2月に決算期を3月1日~翌年2月末日までの1年間に変更しています。
理由は、「春夏・秋冬商品というシーズン性の高い事業運営と決算期を一致させることが合理的であると判断」したからだそうです。
参考URL
https://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/pdf/ir_news_190214.pdf
経営自己診断システムに数値入力後の画面
株式会社三陽商会の1事業年度は昨年の2月に3月1日~翌年2月末日に変更になりました。
今回の決算はこの変更を受け、2019年1月~2020年2月末日と変則的なことになっています。
2ヵ月従来の事業年より増えています。
ですので、収益性や成長性については、その分を割り引いて考える必要があります。
決算書は株式会社三陽商会の投資家情報のページで入手できます。
総合診断の結果
- 収益性が悪い
総合診断結果は以下のようになりました。
総合診断結果
- 収益性3.0
- 効率性5.0
- 生産性6.0
トータルでは青信号になっていますが、収益性が最も低くなっています。事業年が2ヵ月多いのも考慮すると、本来はもっと低い数値になるはずです。売上高営業利益率、売上高経常利益率などがマイナスになっています。
効率性も低くなっています。
ちなみに分析のために利用した貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を決算短信から抜き出してPDFファイルにしました。
また、経営自己診断の結果もPDFファイルでダウンロードできます。
資金繰り診断の結果
- 安全ゾーン
資金繰り診断の結果は以下のようになっています。
資金繰り診断
資金繰り診断の結果は安全ゾーンです。得点もかなり高くなっています。
自己資本比率も良好です。流動比率、当座比率、固定長期適合率とも指標の得点は低いですが、問題ありません。
業界標準企業と比較してもはるかによい成績となっています。
業界標準とはいっても、この経営自己診断システムは中小企業基盤整備機構が中小企業向けに提供しているサービスで、そのデータは200万社以上の中小企業(うち7割は、年商3億円以下の比較的小規模な企業)の財務データを用いて構築されています。
あくまで、中小企業向けのものなのです。
そのへんを考慮しておかないといけません。
上場企業は、株主・投資家の目もあるため経営指標の数値は整っていることが多いのです。
このため、上場企業で経営不振と言われる企業でも中小企業と比較すれば優良企業になってしまうことが多いのです。
個別指標診断の結果
- 収益性が悪い
個別指標診断の結果は以下のようになっています。
個別指標診断の結果
収益性が低いのが気になります。
今回の決算は2019年1月~2020年2月までの14ヶ月の結果です。
2ヵ月分多いのにも関わらず、収益性が低く表れてしまっているのは問題と言えます。
キャッシュフロー計算書の分析
「経営自己診断システム」にはキャッシュフローについての分析はないので、ざっとキャッシュフロー計算書を見てみました。
キャッシュフロー計算書の構造
キャッシュフロー計算書は3つの部分に分かれています。
- 営業活動キャッシュフロー(本業でキャッシュが得られているか?)
- 投資活動キャッシュフロー(投資でキャッシュが得らえているか?)
- 財務活動キャッシュフロー(金融機関を通してキャッシュを得られているか?)
以上の3つです。
基本は営業活動でキャッシュを生み出すことです。
「三陽商会」のキャッシュフロー分析
- 営業活動、投資活動、財務活動のすべての部門でキャッシュを減らしています。
営業活動キャッシュフロー
2019年は約25億円の赤字です。これにより営業活動で約28億円キャッシュを減らしています。
投資活動キャッシュフロー
有形固定資産の取得で、6億円のキャッシュを減らしています
財務活動キャッシュフロー
短期借入金により約10億円のキャッシュを調達しましたが、長期借入金を10億円返済していて、結果的に17億円、キャッシュを減らしています。
トータルでは3年間の間に、キャッシュ残高は192億円⇒181億円⇒130億円と減少しています。
今後の予想
- コロナの影響がどの程度なのか
今回の分析結果では、安全性では問題ない結果となりました。
しかし、2019年単年度では約27億円の赤字となっています。
現在の純資産は388億円ですが、キャッシュの減少が気になります。
コロナの影響がどの程度のものなのか、結果がでるのはこれからです。
再生計画を立てて経営をしていくようなので、注目していきたいと思います。
まとめ
三陽商会の経営診断
事業年度の期間が2ヵ月多いのにもかかわらず収益性が最も低くなっています。
安全ゾーンとなっています。得点も合格点です
営業活動、投資活動、財務活動のすべての部門でキャッシュを減らしています。
コロナの影響がどの程度のものなのか、結果がでるのはこれからです。 |