大手アパレルメーカーレナウンが経営破綻
そんな疑問に答えます。
中小企業診断士のKAZUTOYOがレナウンの経営を簡易分析してみました。
この記事を読むと、経営破綻したレナウンの経営状況についてわかります。
Contents
大手アパレルレナウンが経営破綻【簡易経営分析しました】
本記事の内容
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- 本記事の信頼性
この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。
- KAZUTOYOは家電量販店店員(サラリーマン)として10年以上の経験があります。
- 中小企業診断士としての活動歴10年以上の経験があります。
レナウンが経営破綻
- 民事再生法の手続き開始
アパレル大手のレナウンが自力での経営再建を断念し、民事再生法の手続きを始めました。
直接の原因は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う売上不振です。
ただ、レナウンは以前から経営状況が芳しくなく以前から苦しんでいたようです。
また、中国関連企業への売掛金50億円の回収ができなかったことも大きな理由となっています。
上場企業の経営破綻は今年初
帝国データバンクによると、上場企業の経営破綻は今年初めてになるとのことです。
新型コロナィルス感染症拡大による経済縮小の影響が大手企業にまで及ぶこととなりました。
レナウンの負債総額は138億7900万円です。
今後は、管財人の下でスポンサーを探し、再建を目指すとしています。
- 今年に入ってからの売上状況
レナウンの3月の店頭売上高は前年同月比42.5%減と大幅に減少しました。
更に、4月には81.0%減と大きく落ち込んでいます。
理由は、主力販路である百貨店の休業です。これでとどめをさされたのです。
簡易な経営分析ができるサイトがあります
- 中小企業基盤整備機構が提供し、無料で誰でも利用できます
今回の経営分析は中小企業基盤整備機構が無料で提供している「経営自己診断システム」を使いました。
経営自己診断システムのトップ画像
ちょっと経営分析してみるには手ごろに使えると思います。
レナウンの有価証券報告書を入手
- 有価証券報告書はレナウンのホームページで入手できます
レナウンのサイト右上に株主・投資家情報ページへのリンクメニューがあります。
そこをクリックすると、会社の決算書を含む有価証券報告書を入手できるページに飛びます。
KAZUTOYOが利用した部分のページだけをPDFでアップします。
決算書の数値を「経営自己診断システム」に入力していけばよいのです。
レナウンの簡易な経営分析
- 経営自己診断システムに入力
経営自己診断システムに数値を入力します。
以下のようになりました。
総合診断結果
- 収益性が悪い
総合診断結果では、以下の結果となりました。
診断結果はPDFファイルでダウンロードできます。
総合診断結果
数値が小さいものほど悪いということです。
悪い順に並べると
- 収益性(1.6)
- 成長性(3.0)
- 効率性(3.7)
となっています。
診断結果は青信号という評価です。
個別指標診断結果
- 個別指標を表示させる
個別指標を表示させると次のようになりました。
個別指標診断結果
個別でも収益性と成長性は悪いと判断できます。
資金繰診断結果
- 資金繰は悪くはない
資金繰診断結果
資金繰診断結果を表示させると、合計得点が82点、判定結果は安全ゾーンとなっています。
デフォルト企業群(債務不履行に陥った企業群)よりはるかに良い結果ですし、業界標準企業よりもずっと良好な成績といえます。。
キャッシュフロー計算書の分析
「経営自己診断システム」にはキャッシュフローについての分析はないので、ざっとキャッシュフロー計算書を見てみました。
- キャッシュフロー計算書の構造
キャッシュフロー計算書は3つの部分に分かれています。
- 営業活動キャッシュフロー(本業でキャッシュが得られているか?)
- 投資活動キャッシュフロー(投資でキャッシュが得らえているか?)
- 財務活動キャッシュフロー(金融機関を通してキャッシュを得られているか?)
の3つです。
営業活動でキャッシュを生み出すことが基本です。
レナウンのキャッシュフロー分析
- キャッシュの減少が止まらない
営業活動キャッシュフロー
2年連続赤字で、営業活動でキャッシュを減らしています。
投資活動キャッシュフロー
2019年に有形固定資産を売却し、若干キャッシュを生み出しています。
財務活動キャッシュフロー
2019年には借入は行っておらず、返済のみでキャッシュを減らしています。
トータルで見ると、レナウンの保有するキャッシュ(現金預金)は3年間で91億円⇒78億円⇒33億円と減少していることがわかります。
KAZUTOYOの感想
- 当面成長が見込めないための撤退
「経営自己診断システム」の結果を見ると、そう悪くはない数字です。
KAZUTOYOも「あれ、けっこういいじゃん」と感じました。
安全性の代表的な指標である流動比率も良好ですし、自己資本比率も十分なのです。
KAZUTOYOは中小企業診断士として、中小企業の決算書を数多く見てきましたが、レナウンの決算書は特にひどいとは感じませんでした。
例えば、流動資産は流動負債の2倍もあるし、借入金も売上高に対して多額でもありません。
中小企業では債務超過でにっちもさっちもいかない事業所はよく見かけますが、レナウンの自己資本比率は47%です。優良企業と言っても良いでしょう。
なぜ民事再生法なのか?
ではなぜ、民事再生法の手続きを開始したのか。
それは以前からの売上低迷に加え、新型コロナウイルス感染症拡大で、業績の回復は当面見込めないと考えたからだと思われます。
キャッシュ(現金預金)も3年間で91億円⇒78億円⇒33億円と減少していることも影響しています。
お金がなくなっては何もできないからです。
余裕のあるうちに手を打ったのだと考えられます。
民事再生法の特徴は、経営陣が退陣しなくても良いことです。経営陣がそのまま残ることができます。
会社更生法では、経営陣は一掃されてしまいます。経営陣の経営が悪かったので破綻するはめになったともいえるので、本来はそちらの方が正しいと思います。
でも経営陣はそれではおもしろくないのです。
民事再生法は、もともとは中小企業のために作られたのですが、こんな理由もあって大企業で積極的に採用されているのです。
今後の展開はどうなる?
- スポンサーを探すと言っていますが、どうなるか
先ほども書きましたが、レナウンでは管財人の下でスポンサーを探し、再建を目指すとしています。
でも、レナウンは既に日本の会社ではありません。
中国の山東如意科技集団有限公司、北京如意時尚投資控股有限公司という2社の会社で全株式の50%超を確保していて、既にレナウンは日本ではなく中国資本の会社なのです。
スポンサーを探し、再建を目指すとのことですが、おそらくスポンサーは中国系企業だと考えられます。
ひょっとしたら、水面下ではだいたい決まっているかもしれません。
まとめ
大手アパレルレナウンが経営破綻:簡易経営分析しました
意外なことに、それほど悪い結果ではありませんでした。
キャッシュは年々減少しています。
当面、業績の回復・成長が見込めないため余裕があるうちに撤退したと考えます。 |
経営状況はどうだったのだろう?