音楽ソフト業界の儲け方
令和初の2019年の紅白歌合戦の視聴率が良くなかったと聞きました。
視聴率は過去ワーストで大台割れ37・3%だったようです。
とはいってもかなり良い数字だとは思いますが。
そういえば、音楽業界はCDが売れていないことも、なんとなく知っていました。
一部の歌手やアーティストにはミリオンセラーもあるかとは思いますが、それは例外中の例外です。
CDが売れない中で、どうやって売上を確保しているのだろうと思い、ちょっと調べてみました。
音楽業界全体について調べるとなると、なかなか大変なので、今回は音楽ソフトに絞って書くことにします。
この記事を読むと、CDが売れないなかで、どんな方法で音楽ソフトの売上を確保しているのかわかるようになります。
Contents
中小企業診断士の視点:音楽ソフト業界の儲け方
記事の内容
|
この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。
価値ある音楽資料データを見つけました
- 日本のレコード産業2019
音楽ソフトの動向を知ることができる良い資料がないか探していたら、見つけました。
一般社団法人日本レコード協会が出している「日本レコード産業2019」という資料です。
https://www.riaj.or.jp/f/pdf/issue/industry/RIAJ2019.pdf
この資料は主に生産側から見た音楽ソフトの売上・数量について書かれています。お客さんが最終的に購入した売上を合計したものでないので、そのへんは割り引いて考える必要があります。ただし音楽配信については例外のようです。
資料は28ページに及ぶもので、かなり詳細なものとなっています。
今回はこの中の一部のデータをお借りして書いていきます。
音楽ソフトの長期的な生産 金額の推移
- 1996年~2000年がピークでその後は減少
音楽ソフトの長期的な生産 金額の推移は以下のようになります。
1996年~2000年がピークでその後は一部例外を除き減少していることがわかります。(赤く囲った部分がピークの頃)
現在は、ピーク時の半分以下になっています。
音楽ソフト産業は長期的にみると衰退傾向であるとわかります。
音楽ソフトの生産 金額の推移(クリックすると拡大します。)
出所:「日本レコード産業2019」より
音楽ソフトの生産売上・生産数量の推移
- 生産売上は横ばいで、数量は減少
まずは、2018年のレコード生産・音楽配信の概況を見ていきます。(クリックすると拡大します。)
出所:「日本レコード産業2019」より
以上のような状況です。
オーディオレコードは金額的に前年より減少していますが、音楽ビデオは増加しています。
音楽配信は前年より増加しています。
総合的には前年を上回っていることがわかります。
CDは売れなくなっているようですが、音楽ソフト全体で見ると、前年対比105%で伸びていることがわかります。
数量と金額の推移
次に音楽ソフトの数量と金額の数推を見ていきます。
音楽ソフトの数量自体は減少していますが、金額的には横ばいであることがわかります。
ということは、商品単価が上がっていると推測できます。
オーディオレコード、音楽ビデオ、音楽ソフト合計、音楽配信で見る
今度は、もう少し細かく見ていきます。
オーディオレコード、音楽ビデオ、音楽ソフト合計、音楽配信を見ていきます。
まず音楽ソフト数量の推移を見ていきます。
音楽ソフト数量の推移
数量で見る音楽ソフト・音楽配信の推移(数量:百万枚・回) | ||||
オーディオレコード | 音楽ビデオ | 音楽ソフト合計 | 音楽配信 | |
2014年 | 172 | 54 | 226 | 197 |
2015年 | 170 | 54 | 224 | 178 |
2016年 | 161 | 52 | 213 | 159 |
2017年 | 154 | 48 | 202 | 146 |
2018年 | 139 | 55 | 195 | 133 |
上の表のグラフ化
出所:「日本レコード産業2019」を基に加工しています
グラフは上の表を基に作成しています。
グラフを見ると数量的にはオーディオレコードは減少、音楽ビデオは横ばい、音楽ソフト合計では減少、音楽配信も減少していることがわかります。
次に音楽ソフト金額の推移を見ていきます。
音楽ソフト金額の推移
金額で見る音楽ソフト・音楽配信の推移 | (金額:億円) | ||||
オーディオレコード | 音楽ビデオ | 音楽ソフト合計 | 音楽配信 | 音楽ソフトと音楽配信合計 | |
2014年 | 1864 | 677 | 2542 | 437 | 2979 |
2015年 | 1826 | 719 | 2544 | 471 | 3015 |
2016年 | 1777 | 680 | 2457 | 529 | 2985 |
2017年 | 1739 | 582 | 2320 | 573 | 2893 |
2018年 | 1576 | 827 | 2403 | 645 | 3048 |
上の表のグラフ化
出所:「日本レコード産業2019」を基に加工しています
グラフを見ると金額的にはオーディオレコードは減少、音楽ビデオは横ばい、音楽ソフト合計では微減、音楽配信は増加、音楽ソフトと音楽配信合計は横ばい~微増であることがわかります。
数量推移と金額推移からいえることは商品単価のアップ
数量的にはオーディオレコードと音楽配信は明らかに大きく減少しています。数量全体としても減少しています。
にもかかわらず、全体としてみると金額は横ばい~微増ということは、商品単価がアップしていることになります。
乃木坂46とモーニング娘。をアマゾンで調査
- 単価アップを狙っているらしい
どうやら、音楽ソフトの数量の減少分を商品単価のアップでしのごうとしているらしいことがわかりました。
ということで、そのへんが小売にも影響を与えているのではないかと、KAZUTOYOも良く利用するアマゾンで調べることにしました。アマゾンのミュージックカテゴリーで何の条件もつけず、アーティスト名だけ入力してどんな画面が表示されるのか見てみました。
- 有名な女性アイドルグループ2組で調べることにしました。
まずは乃木坂46です。KAZUTOYOが使っているマウスコンピュータのCMをやっているので知っているのです。
もう一組は女性アイドルグループの老舗モーニング娘。です。新旧アイドルの比較をしてみたということです。
乃木坂46の画面
9300円、26196円の商品が表示されています。
両方とも映像商品です。
なかなか高額商品だと感じました。これだけで判断できるわけではないですが、売れ筋商品や買って欲しい商品が上位にくると考えられますので、商品単価が上がっていることが推測できます。
モーニング娘。の画面
こちらは、6005円、1980円、4408円の商品が表示されました。
乃木坂46と比べれば、高額とはいえないですが大昔を知っているKAZUTOYOからすれば、高い印象です。
1980円の商品は昔でいうシングルに映像ソフトのおまけをつけたものだと思います。シングルとはいえ、3曲入っているのが昔と違うところです。
このようなやり方で単価アップを図っているのだと解りました。
また、CDにもアマゾン限定商品があることを初めて知りました。
一般的な売り上げの構造は?
- 売上は客数×客単価
売上の構造を式で示すと売上=客数×客単価です。
これは一定時点の売上ということになります。
一定期間の売り上げということになると
一定期間の売上=客数×客単価×購買頻度 ということになります。
更に客は新規客と既存客に分けて考えることができます。また、流出する客もいるので流出客のことも考える必要があるのです。
まとめると、客数=(新規客+既存客-流出客)ということになります。
客単価は、商品単価×個数ということになります。
以上から売上を向上させる方法としては
- 新規客の増加
- 既存客の流出防止
- 商品単価のアップ
- 売上個数のアップ
- 購買頻度の向上
以上の方法があることがわかります。
これらの方法のいずれか、もしくは複数を実行していけば、売上増加につながるということです。
例えば、先ほどの映像ソフトのおまけをつけたモーニング娘。の1980円のシングル(?)CDは商品単価のアップを狙った取組といえます。
KAZUTOYOからすると、昔ならあとちょっとでアルバムが買える価格です。
音楽ソフト業界の戦略
- 商品単価のアップ
今回のデータからわかったことは、客観的な事実として全体的に数量的には減っているということです。
これは音楽配信も含めての話です。
お金をだして商品を購入するのがお客だとしたら、音楽ソフトを購入するお客は減っていると推察できます。
ライトなファン層などでいままで商品を買っていた人が、ユーチューブなどで見ればいいや、となって商品を買わなくなった人も多いと思いますが、それはこのデータからだとなんともいえません。
データからいえることは、数量的には減っているという事実です。
その対応として、商品単価をアップさせているということがデータから考えられます。
アマゾンの画面を見ても、上位にくるのは高額商品が多いので、小売にまでその戦略がいきわたっていることが読み取れます。
その他、今回触れなかった新規客の増加、既存客の流出防止、売上個数のアップ策についても明確なデータはありませんが、材料はあると思うので後日書きたいと思います。
まとめ
「日本のレコード産業2019」という資料です
長期的には減少傾向が継続し、現在はピーク時の半分以下になっています。 近年の音楽ソフトの数量自体は減少していますが、金額的には横ばいです。ということは商品単価がアップしているということです。
両者とも商品単価は高いようです。
一定期間の売上=客数×客単価×購買頻度 客数=新規客+既存客-流出客 客単価=商品単価×個数
全体的には量が減っているので、その分商品単価を上げて対応しているのです。 |