MMTの提唱者ステファニー・ケルトン教授が来日
現在、政治・経済界を賑わしている、MMT(モダン・マネタリー・セオリー:現代貨幣理論)の提唱者ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が来日しています。
中小企業診断士三橋貴明氏とも対談し、動画になっています。
今回はその第2弾対談動画のポイントを説明します。
前回ブログは「中小企業診断士の視点:MMT(モダン・マネタリー・セオリー:現代貨幣理論)の提唱者、ステファニー・ケルトン教授来日その1」
になります。興味があればご覧ください。
Contents
中小企業診断士の視点:MMT(モダン・マネタリー・セオリー:現代貨幣理論)の提唱者、ステファニー・ケルトン教授来日その2
記事の内容
MMT対談(三橋貴明氏とステファニー・ケルトン教授)今回の話のポイント
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今回は、間に私の考えや感想なども間にはさんで記事にしています。
対談内容のすべてを網羅できていないと思われますが、参考にしていただけたら幸いです。
MMT対談(三橋貴明氏とステファニー・ケルトン教授)第2弾
三橋貴明氏とステファニー・ケルトン教授の第2弾対談動画です。
1.日本は経済的に成長していない
- 主要国の2018年GDP(自国通貨建て)対2001年比のグラフをみると日本は成長していないことがわかります
2017年の日本のGDPは2001年の1倍
ほとんど変わっていません。
日本は主要国の中で経済的にほとんど成長していないことがわかります。
2.経済成長しない理由は政府支出がないから
- 政府の支出がないと経済は成長しない
先進国の政府支出(自国通貨建て)の推移(2001年=1)のグラフ
次に先進国の政府支出のグラフを見てください。
政府が支出するとGDPが増大していると読み取れます。
逆に政府が支出を行わないと、GDPが増加成長しないことがわかります。
- 「政府の赤字は政府以外の黒字(民間の黒字)になります。」
- 「政府が赤字をこれだけ持っている、というよりも非政府部門がこれだけ黒字を持っていると言った方が良い。」
というのも従来とは異なった考え方です。
財政が赤字になったほうが良いと捉えられる考え方です。
3.MMTの理論は正しい
- 日本の負債と長期金利の推移をみるとMMT理論の正しさがわかります
日本の負債と長期金利の推移のグラフ
これは日本の事例がMMTの正しさを証明したグラフです。
2018年の政府の債務は1970年の152倍となっています。
市中の金が国債に流れているのですから、経済学者の主張が正しければ日本は金利が上がるはずですが、実際は逆で金利は減少し続けています。しかもいまはマイナス金利となっているほどです。
(大量の国債を発行すると、お金がそちらに回り市中に出回る金は減ると考えられます。今までは市中の金が減れば、市中金利が上昇すると考えられていました。ですが、まったく逆の現象になっています。)
4.クラウディングアウトは間違っていた
- 主流派の経済学者が言う「クラウディングアウト」は全く間違っているということです。
クラウディングアウト(英: crowding out)とは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されること。「クラウディングアウト」(crowding out)の字義は「押し出す」という意味。
Wikipediaより
5.日銀のやり方では経済は成長しない
- 低金利、マイナス金利でも景気は回復しない
低金利・マイナス金利であることは日本がグローバルな視点で経済が弱いことを表しています。
というのは、日銀は低金利・マイナス金利が経済を刺激してくれる、と考えてそのような政策をとっているからです。
低金利・マイナス金利にすれば企業はお金を借り、投資するようになると考えています。
しかし、それでだけではお金が回らず、経済は成長しません。
6.リフレ派の考え方に対して
- マネタリーベースを増やしただけではダメ
リフレ派は、金融緩和しマネタリーベースを増やせば、円がだぶつき円の価値が下がりインフレになってデフレを脱却し、不況を脱出できると考えているとのことです。
このようなリフレ派の考えに対して、「金利を下げても、民間に借りる気がないならばそれほど効果はない」といっています。
ケルトン教授の話
「金融政策が機能するのは、信用のコスト、つまり金利を設定をすることによってです。それに対して人々は、お金を借りるということで日本経済に支出をするということで反応するわけです。
従って金融政策というのは、人々が負債を抱えようとするときに機能するわけで、経済が成長するためには2つの方法があります。
外部セクターといのは貿易なんですが、それを外すと2つの方法があります。
- 一つは民間部門の信用、つまり借入です
- もう一つは、公的部門の負債です
中央銀行が何をしようとしているかというと経済を成長させたいわけです。けれども民間部門の信用創造に頼っているわけです。
しかしその問題というのは、もし企業がたくさんの企画(仕事)を持っていなければ、彼らはお金を借りる理由がほとんどないのです。
生産能力を増やしたり、あるいは雇用を増やす必要もない。機械を買ったする必要もない。工場を買う必要もない。
そして、顧客、つまり家計というのが十分な所得成長に対するコンフィデンス(確信)を持っていなければ、お金を借りようとしません。つまり負債というのは自分たちの所得から返済しなければならないので、所得や賃金が増えていない時には難しいわけです。
借りたいと思わないわけです。支出ができないわけです。
というのは、今後返済に充てるだけの所得があるかどうか、不安だからです。」
これに対して、三橋氏が「我々が自信がない、ということですね。」と言っていますが、企業でも家計でも、将来についての自信が必要ということです。
物の価格が下がっていくデフレ日本では、長期的に将来に亘って継続的に儲かる仕事がありません。民間は基本損することはやりません。でも儲からないとわかっていても社会の為にやらなくてもならないことがあります。
社会インフラの整備が典型です。しかし民間はやりません。儲からなくてもやらなくてもいけないことは政府がやるべきです。政府がお金を出して、例えば道路工事のようなインフラを整備すれば、お金は回っていくのです。
10年ぐらいかかる大規模な工事の仕事を政府が作れば、民間も設備投資をします。将来大丈夫というコンフィデンス(確信)が生まれるからです。(10年間仕事が安定的に取れるとわかれば、民間も投資するはずです)
そうすれば、お金も経済も回っていくと考えます。
財政の赤字は民間の黒字:「政府が赤字を増やすと、民間の貯蓄の供給を増やす。」だそうですから、大丈夫です。
7.マネタリーベースを増やしてもインフレにはならない
- 中央銀行が市中にお金を出せば、それによって成長、貸出が増えるわけではない
日本は商品の価格が下がっていくデフレ状況下にあります。
これを適度なインフレに持っていこうとして、マネタリーベースを増加させていますが、その結果は期待に反したものとなっています。
日本のマネタリーベースとインフレ率のグラフ
このグラフは三橋氏が作成したものですが、素晴らしいグラフだとケルトン教授は言っています。
また、「銀行部門に対して、どんどんお金を注入することによって経済を是正することができる、それはインフレ的になると思っていたけれども、それを否定する最高のグラフです。主流経済学派の考え方が逆さまであることがわかります。
銀行にお金を出せば、それによって成長、貸出が増えると思っていたが間違いを証明したグラフとなっています。」
とも言っています。
8.10月の消費増税について
- 消費増税は正しい選択ではない
三橋氏の「デフレが継続している中で、10月に消費税を増税することになるが、それはどう思うか?」との問いに対して、
ケルトン教授は「一定の消費支出を減退させることになるから、政府がやりたいと思っていることの真逆になる。政府は堅牢な日本経済を作りたいと思っているのに。」
と言っています。
また、税金の目的に関して「税金の目的は支出能力を減らすということ。経済成長を達成したいということなら、もっと人々に支出してもらう必要がある。」と言っています。