メーカーと小売店が協力(癒着?)していた時代
東京秋葉原の店舗にも何年かいたことがあります。
今と違って、まさに家電の街 秋葉原の時代の話です。
今日はその頃の話です。
この記事を読むと昔はメーカーと小売店が協力(癒着?)していたことがわかります。
Contents
中小企業診断士の視点:メーカーと小売店が協力(癒着?)していた時代
記事の内容
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この記事は中小企業診断士であり、かつて家電量販店勤務経験のあるKAZUTOYOが自らの経験をもとに書いています。
家電メーカーは自社で販売会社(卸)を持っています。販社とも言います。
この記事のメーカーとは、主にその販売会社のことを意味しています
秋葉原の家電量販店は、主にそのメーカー系列の販売会社から商品を仕入れていました。
価格面での協力関係
①価格は部門ミーティングで決まる ②実際の売価は販売員次第 ③安く言ったのがばれると怒られる |
①価格は部門ミーティングで決まる
- 月一回の部門ミーティング
商品の表示価格や実売価格は、月一回の部門ミーティングで渡されます。
KAZUTOYOのいた店は、秋葉原だけでも複数の店舗を抱えていました。部門ミーティングは、店舗ごとに分散している同じ部門(白物家電売り場やAV売り場等)の担当者が一堂に会しておこなわれます。
そこで部門の長(部長クラス)から、『表示価格・実売価格表』を渡されます。
その表には、商品ごとに表示価格や実売価格が書かれています。
ミーティングでは、部長から商品のことだけでなく最近の情勢や今後の計画などの話もでます。その後、担当者は、『表示価格・実売価格表』を店舗に持ち帰り、その表をもとにプライスなどを作っていきます。
メーカーの意向
表示価格や実売価格にはメーカーの意向も入っています。
昔、秋葉原の店舗で買い物をされた方もいるかと思いますが、多分表示価格は型落ち品などでない限り、どこの店も大差ないと感じていた人もいたかと思います。
それは、KAZUTOYOがいた店だけでなく多くの他の店舗でも同じようにして、価格設定をしていたからです。量販店は、ある程度メーカーと協力して表示価格や実売価格を決めていたのです。
競争が過激にならないように調整していたのだと思います。
②実際の売価は販売員次第
- 実際の売価は販売員が決めることができた
店舗では『表示価格・実売価格表』に沿ってプライスを作り、基本的に実売価格表に従って商品を販売します。ですが、先ほども書きましたが、秋葉原の店舗はほぼ似たような価格で差はあまりないのです。
ですので、どうなるかというと実売価格表の価格よりも低い価格で売ることも多々あるのです。それは販売員の裁量になります。
実売価格表通りの価格で売れば、多分〇〇%の粗利益率ということは、だいたい販売員は分かっています。
ですから、売れ行きのよくない雨降りの日などは、「今日は雨降りなので、お客も少ない。勝負しよう。」ということで粗利益率は犠牲にしても実売価格表よりも安い価格で販売することもあるのです。
で、安く売ってしまうと当然利益が少なくなります。そこで利用するのが「拡売・協賛伝票」です。
店には、「拡売・協賛伝票」と言われる伝票があり、安く売ってしまった場合は、伝票にその理由を書いておきます。
それで、あとでメーカー(メーカーの販売会社)の担当者が来た時に、「こういう理由で安く売りました。少しでも良いので補填して」、というとメーカーの担当者が金額を書いて、サインしてくれることもあります。
③安く言ったのがばれると怒られる
- ばれると怒られることもあります
実際の売価は販売員が決めることができますが、価格表の実売価格よりも極端に安い価格で言ってしまって、売れればよいのですが、売れないとあとで困ることもあります。
安い値段を聞いたお客は、他店で「いや、あの店で〇〇円と言っていた」と販売員に言います。
すると、「あの店では、あの商品を〇〇円とかなり安く売っている」、という話がメーカーの耳にはいります。
今では、いくらで売ろうが店の勝手なのでいいのかもしれませんが、昔はそうでなかったのです。
後日メーカーの担当者から連絡がきて、「あまり安く言わないでください」と実際に言われたこともありました。
昔はそんな時代だったのです。
人材面での協力関係
①メーカーから販売員を派遣 ②イベントや催事などで応援要員を派遣 ③イベントアルバイトの派遣 |
メーカーから販売員を派遣
- メーカーが販売員を派遣
これはKAZUTOYOのいた店舗だけでなく、秋葉原にある他の大型店にも言えます。メーカーがマネキン(店頭において各種商品の宣伝・販売促進にあたる販売員)を有力店に派遣していました。
目的は自社の商品を売ることです。
マネキンは歩合給の人が多かったと思います。店が給料を払っているわけではないということもあり、店舗側のいうことを聞かない人もいました。話を聞くとかなり高額な給料をもらっている人も中にはいました。
店舗は慢性的に人員不足だったので、彼らの存在は売上的にも大きな戦力といえました。
イベントや催事などで応援要員を派遣
- メーカーはイベント実施の際や繁忙期には応援要員を派遣していました
店がイベントを行う時や繁忙期には、メーカーが応援要員を派遣してくれていました。
応援要員とはいっても、いつもくるメーカーのセールス担当者などもいました。
応援要員はマネキンと違って接客がうまいというわけではないのですが、自社の商品の説明はできるので助かりました。
また、秋葉原に買い物に来る人は電車利用の人も多く、商品を持ち帰る人には持ち帰りができるように、手提げをつけるなどの仕事もありました。それらの仕事をやってもらうこともありました。
アルバイトの派遣
- アルバイトも派遣
メーカーの新製品販売の時などは、イベントコンパニオンの若い女性の派遣もありました。店頭で自社新商品の宣伝をするのが目的です。
アルバイトとはいっても、時給は高いと聞いたような気がします。昔のことなので具体的な金額は覚えていませんが。
それとは別に、パソコン売り場には大学生のアルバイトもいました。
秋葉原の近くに東京電機大学があり、そこの学生が多かったと記憶しています。長期間に亘ってアルバイトをしていて、時給も高かったので学生にとってはおいしい仕事だったと思います。
時給は確か3000円ぐらいだったはずです。
以上のように、メーカーと店は共存共栄という意識のもと、お互いに協力関係にあったといえます。
まとめ
価格面での協力関係
月一回部門ミーティングをやって、その時『表示価格・実売価格表』を渡されていました。
実際の売価は販売員が決めることができました。
実売価格表より安く言っているのがばれると、怒られることもありました。
人材面での協力関係
メーカーがマネキンといわれる販売員を派遣していました。
メーカーはイベントや繁忙期には応援要員を派遣していました
イベントコンパニオンや学生アルバイトも派遣していました。 |