中小企業診断士の視点:企業の安全性(流動性)を示す経営指標

企業の安全性(流動性)を示す経営指標

中小企業診断士の勉強を始めると、財務会計で経営指標について学びます。

経営指標を理解できると、企業の決算書で経営状態も客観的に把握できるようになります。

今回は、数ある指標の中でも重要だと言われる企業の安全性を示す経営指標の話です。

この記事を読むと、企業の安全性を示す経営指標についてわかるようになります。

企業の安全性を示す経営指標

記事の内容

  • 企業の安全性(流動性)を示す指標の意味?
  • 流動比率
  • 当座比率
  • 固定比率
  • 固定長期適合率
  • 自己資本比率(総資本対自己資本比率)

この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。

 

企業の安全性(流動性)を示す指標の意味?

  • 安全性(流動性)指標とは企業のお金の充足度合のこと

流動性とは企業が必要とする資本(資金)を充足する度合いを示すものです。また安全性(流動性)指標は企業の倒産リスクを表す指標とも言えます。

流動性は資本構成の適否や借入金などの支払能力の有無、資本構造の安定度によって判定されます。

安全性分析(流動性分析)は経営分析上重要な経営指標となります。

おおざっぱに言えば、無借金経営の企業はこうした指標はかなり良好となります。

安全性分析(流動性分析)を示す主な指標は、流動比率、当座比率、固定比率(自己資本対固定資産比率)、固定長期適合率、自己資本比率(総資本対自己資本比率)の5つです。

 

次から、一つ一つの指標について見ていきます。

 

流動比率

  • 企業の支払能力を見る指標

式:流動資産÷流動負債×100%

企業の短期の支払能力を見る指標の一つが流動比率です。

流動資産は1年以内に現金になる資産と営業循環過程にある資産のことです。流動比率は1年以内の資金の回収予定が、資金の支払い義務の何%あるかを示す指標です。

流動資産の多い少ないは企業の支払能力に影響します。絶対額の大きさではなく、流動負債との比較で判断されます。

流動比率は200%以上が理想です。つまり流動資産が流動負債の2倍以上ということです。ただ、そんな企業はわずかです。業種や業態によって違いますが140%程度あれば良いといえます。

流動比率の計算で利用する部分

 

当座比率

  • 流動比率をもっと厳しめに見た指標

式:当座資産÷流動負債×100%

流動比率をもっと厳しめに見た指標が当座比率です。

流動資産のうち金・預金、受取手形、売掛金、有価証券を当座資産といいます。

流動比率は1年間の短期の支払能力を示しますが、当座比率は即時の支払能力を示します。

商品などは流動資産ですが、すぐに売れてお金になるとは限りません。でも当座資産だと即お金にできます。販売という確実性に乏しい過程を経なくても良いからです。

当座資産と流動負債の割合を見る指標が当座比率です。

当座比率が100%以上あると、支払能力はかなり安心だということです。

当座比率の計算で利用する部分

固定比率

  • 自己資本内で固定資産をまかなっているかを示す指標

式:固定資産÷自己資本×100%

固定比率は固定資産と自己資本の均衡状態を示す指標です。

長期的な財務の安定性を見る指標といえます。固定資産は流動資産と異なり、企業が長期に亘って所有する資産です。流動資産の商品などと違って、販売してお金に換える資産ではありません。

ですから、本来なら固定資産は全部自己資本でまかないたいところです。

 

固定資産は自己資本以下であることが望ましいのです。それを見る指標が固定比率です。固定比率は100%以下が理想ですが、そんな企業は少ないのが現状です。

固定比率の計算で利用する部分

固定長期適合率

  • 固定比率を甘くした指標

式:固定資産÷(自己資本+固定負債)×100%

固定長期適合率は固定比率に関連する流動性を示す指標です。固定比率を甘くした指標といえます。

固定長期適合率は固定資産と長期資本の適合状態を示す指標です。

固定資産に投下する資本が、自己資本で不足する場合は、長期に返済する固定負債との合計額で投資額をままなえれば良いという考え方の指標です。

固定長期適合率が100%以内なら、それほど心配する必要はないと言えます。

固定長期適合率の計算で利用する部分

 

自己資本比率(総資本対自己資本比率)

  • 自己資本比率がマイナスになると債務超過です

式:自己資本÷総資本×100%

自己資本比率は総資本に対する自己資本の割合を示す経営指標です。

総資本とは貸借対照表の負債の部と資本の部の合計を言います。

(総資本は流動資産と固定資産の合計とも同額です)

自己資本比率の計算で利用する部分

自己資本比率が50%以上あることが理想的と言えます。自己資本は返済の必要がなく、かつ利息を支払う必要がないからです。

自己資本比率が高いほど、企業の財務体質が健全ということです。

10%未満であると、問題があると言えます。総資本のうち90%以上の負債(借入金、支払手形、買掛金、社債など)で経営していることになるからです。

自己資本比率が低いということは、負債が多いということになり、借入金の返済や金利の支払いも多額になります。それだけ経営状態は厳しいといえます。

 

まとめ

  • 企業の安全性(流動性)を示す指標の意味?

安全性(流動性)指標とは企業のお金の充足度合のこと。無借金経営だと指標は良くなります。

  • 流動比率

企業の短期の支払能力を見る指標です。

  • 当座比率

流動比率をもっと厳しめに見た指標です

  • 固定比率

自己資本内で固定資産をまかなっているかを示す指標

  • 固定長期適合率

固定比率を甘くした指標です

  • 自己資本比率(総資本対自己資本比率)

自己資本比率がマイナスになると債務超過です

  

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中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。