中小企業診断士の視点:戦略がない、戦術のみで戦うとどうなるのか

戦略って大切なの?

「中小企業診断士の視点:戦略と戦術」のブログで戦略と戦術の違いを書きました。

経営にも戦略が必要です。

それが経営戦略です。

それを受けていろいろな戦術があるのです。

ですが、中小企業には戦略がないことが多いのです。

 

今回は、私が昔いた家電量販店(中小企業ではないですが、)を例にして、経営戦略がなく、戦術のみで戦うとどうなってしまうのか書いていくことにします。

 

この記事を読むと、戦略が大切なことがわかります。

 

中小企業診断士の視点:戦略がない、戦術のみで戦うとどうなるのか

記事の内容

  • ライバル店のチラシに勝てない

この記事は私の経験をもとに書いています。

ライバル店のチラシに勝てない

①価格で負けている

②目玉品が目立たない

③価格で負ける理由

④結果どうなったのか

①価格で負けている

  • ライバル店より、高い印象がある

家電量販店では、定期的に新聞折り込みチラシを出して集客します。ライバル店もほぼ同じ日に新聞折り込みチラシをだすのですが、価格を見るとどうも私のいた家電量販店のほうが全体的に高い印象になっています。

 

まったく同じ商品が両方の店舗のチラシに掲載されたこともありましたが、ライバル店の方が安かったので、がっかりしたことを覚えています。

これでは「うちの店は高いですよ」と言っているようなものです。

家電量販店へのお客の一番のニーズは価格の安さです。

その一番重視してしなくてはいけない価格で負けているのです。

当然、お客様は両方の店舗のチラシを見比べて、安いほうで買おうとします。結果私のいた店舗には来店しないことになります。

 

②目玉商品が目立たない

  • 目玉商品が目玉商品の役割を果たしていない

チラシには目玉商品の掲載は欠かせません。その目玉商品の魅力で集客が決まるからです。目玉商品は来店客数を増やすために作る商材なのです。

 

ライバル店はそのことをよくわかっていて、目玉商品には圧倒的な魅力がありました。とにかく安いのです。赤字なんてなまやさしいものではありません。

 

売ったら確実に損します。例えばテレビを3,000円で販売するなどです。異常に安いので家電のことに興味のない方でもその安さはわかります。(今はそのようなことは禁止されているのでできませんが、昔はあったのです)

 

ライバル店の目玉商品はそのような価格設定をしていました。

 

ですが、私のいた店には目玉商品はあったのですが、普段より多少安い程度です。普段の価格を知っていなければわからないと思います。

あなたは、どちらの店に魅力を感じるでしょうか?

 

③価格で負ける理由

  • なぜ価格設定で負けてしまうのか。それは長期的視点と戦略的思考がないから。

チラシの価格設定で負けてしまうのは、チラシをまく目的がはっきりしているかどうかです。

ライバル店のチラシをまく目的ははっきりしていました。とにかく集客です。そのために圧倒的な低価格訴求のチラシをまいたのです。

家電量販店の一番の魅力は価格の安さです。お客は安い店に行って買うのです。そのニーズに対応するためです。当然ライバルに負けない価格でないと来店しないので、どこの店よりも安い価格を設定したチラシを作ってまいたのです。

利益はあまり考えていなかったはずです。

 

また、どの店よりも安い店というイメージを持ってもらうこともあったと考えます。

継続していくとそのイメージは人々の頭に固定化していき、最初に行く店はその一番安い店ということになっていきます。長期的な視点、戦略的に考えていると言えます。

 

一方、私の店はチラシをまく目的がライバル店よりもはっきりしていなかったのです。お客にも来て欲しいが売れたらそれなりの利益も上げたい。ということだったのです。お客の家電量販店に求める「低価格」というニーズよりも自店の都合を優先させたのです。

 

ですからチラシに載せる商品の価格も利益を考えた価格です。

 

経営的に長期で見ていくとこのままいったらやばい。ライバル店にやられることになるな、という思考もないのです。

長期的な視点ではなく短期的な視点です。また、将来のこと考える戦略的思考もないのです。

 

④結果どうなったのか

  • 最後は撤退に追い込まれる

ライバル店のチラシの効果があったためか、その他の理由があったためかライバル店と私がいた店との売上の差はかなり大きなものとなっていきました。

そのようなことは、メーカーのセールスさんと話していればなんとなくわかります。

 

そして、いよいよ経営が厳しくなってきたのか、コンサルタントの方が店舗を見にきました。経営陣から言われてきたのだと思います。

 

店の中の問題点や改善点をさぐるためです。

 

もはや、そのような問題ではないのに、と私は内心では思っていました。店内をいくらいじっても、来店客がもう少ないのです。見る人がいないのだからどうしようもありません。もう、その段階ではないのです。

中小企業診断士となったいまでは、店内の改善は、一つの戦術であることはわかります。

でも、その戦術では集客はできないこともわかります。すごく改善がよければ、じわじわと良くなっていくかもしれませんが、なんとも言えません。少なくとも即効性はありません。

 

でも、当時の経営陣は店内を改善すれば、売上が上がると思っていたのだと推察します。つまり店内を改善すれば、どこからかお客が集まってきて、売上も上がると。

 

でも現実はそうではなく、店内を改善しても来店客は増えないということだったのです。

 

  • ライバル店は盛況

一方のライバル店は、盛況のようでした。

これは、結局チラシの件も含めて、戦略的に経営を考えていたかどうかの差であったと考えます。

私のいた店は戦術思考が主で、戦略的な思考がなかったのです。

最後は、私のいた店はその地から撤退することになりました。

ライバル店はそうなるように戦略的に考えて動いていたのです。だからチラシをまいた結果、その時の費用対効果がマイナスだったとしても、それは折り込み済みだったのです。もっと長期的に戦略的に考えていたのです。

 

戦略がいかに大切か、の事例といえます。

 

まとめ

戦略がない、戦術のみで戦うとどうなるのか

ライバル店のチラシに勝てない

  • 価格で負けている

ライバル店より、高い印象がある

  • 目玉商品が目立たない

目玉商品が目玉商品の役割を果たしていない

  • 価格で負ける理由

長期的視点と戦略的思考がないから。

  • 結果どうなったのか

最後は撤退に追い込まれる

  

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。