中小企業診断士の視点:トヨタ系列部品メーカーが多角化に挑戦

トヨタ系列部品メーカーが多角化に挑戦

最近はどの業界でも環境変化が激しく、経営環境も厳しいものとなっています。

自動車業界はまさにその典型的な業界といえます。

大きな流れでいえば、エンジンから電気へと動力機構が変化していると言えます。

その過渡期を象徴するのがハイブリッド車ではないでしょうか。

いままで、大手自動車会社の系列で、エンジン関連につながる部品を製造していた部品メーカーは、このままその部品をずっと作り続けていくことはできないでしょう。

どこかで、変化していくことが必要です。

今、その環境変化の中で、生き残りのために異なる事業分野への進出を試みているトヨタ系列の部品メーカーがあります。異なる事業分野への多角化を図っているのです。

今回は、トヨタ系列の部品メーカーが事業の多角化に挑戦しているという話です。

この記事を読むと、生き残りのために可能性を求めて、自動車製造とは直接関係のない新たに市場に挑戦をしている部品メーカーがあることがわかります。

 

トヨタ系列部品メーカーが多角化に挑戦

本記事の内容

  • 多角化戦略とは
  • 系列部品メーカーの多角化事例
  • この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。
  1. KAZUTOYOは家電量販店店員(サラリーマン)として10年以上の経験があります。
  2. 中小企業診断士としての活動歴は10年以上です。

 

多角化戦略とは

  • 企業が成長するために方策の一つ

企業がある事業分野で成功を納めても、その成功が未来永劫ずっと続く保証はどこにもありません。製品や事業には寿命があるからです。

それは、製品ライフサイクル理論でも言われていることです。

(製品ライフサイクル理論:製品にも、人間と同じように誕生から死にいたるまでの一生があるとする理論です。その一生は導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階に区分されます。)

 

そこで、企業は生き残りのために今後の策を模索することになるのですが、その際方策の枠組みとしてよく利用されるのが、アンゾフの「市場・製品マトリックス」です。

アンゾフの「市場・製品マトリックス」は中小企業診断士試験を受験する上で必ず勉強することになります。

アンゾフは企業成長の方策を考える際に、次のような枠組みを提示しました。

アンゾフの「製品・市場マトリックス」

  製品
既存製品 新製品
市場 既存市場 市場浸透戦略 新製品開発戦略
新市場 市場拡大戦略 多角化戦略

この表によれば、アンゾフは新市場浸透戦略、新製品開発戦略、市場拡大戦略、多角化戦略の4つの方策を考えています。この中に多角化戦略があります。

多角化戦略は企業成長の最後の方策です。

多角化戦略は新製品で新市場に参入することです。企業にとっては今までの事業活動とは異なる事業領域への参入となります。多角化戦略は企業にとって、未知の市場なのでリスクも高いと考えるのが普通です。

 

多角化戦略の例としては、サントリーが健康食品市場に参入したことや、富士フィルムが医薬品市場に参入していることが有名です。

 

典型的な多角化の事例だと考えられます。

 

系列部品メーカーの多角化事例

  • 3社3様です

今回、紹介するのはトヨタ系列の部品メーカー3社です。

名称と主力事業、多角化に向けた取組を表にすると次のようになります。

トヨタ系列3社の取組

トヨタ系列部品会社の多角化事例
会社 主力事業 多角化事業
豊田合成 自動車内装部品製造 殺菌能力が高い深紫外線発光ダイオード開発
ジェイテクト 自動車用ステアリング製造 補助機能を充実させた介護用歩行器開発
アイシン精機 自動車用変速装置 相乗りサービス運用

 

豊田合成

豊田合成は自動車の内装品を製造している会社です。

豊田合成ではウイルスの殺菌能力が高い「深紫外線発光ダイオード(LED)」の開発を進めています。

新型コロナウイルスの類似ウイルスに対して、10秒以内の照射で99.9%の殺菌が可能ということです。将来的には使用済み防護服の殺菌、カーシェア車両の殺菌などに利用することを考えているようです。このほかにも幅広い業種での応用も検討しているとのことです。

 

ジェイテクト

ジェイテクトはステアリング装置を製造している会社です。

ジェイテクトでは、介護用歩行器を本年度中にも発売する予定です。

自動車分野の技術を生かして、歩行器利用者と他者との距離を最適にして安全性を確保するなどの歩行補助機能を充実させています。下り坂は自動でブレーキがかかるようになっているようです。

 

アイシン精機

アイシン精機は変速機のメーカーです。

エンジン車から電気自動車に置き換わっていく流れで、最も影響を受けることがほぼ確実なのが同社です。エンジン車用の変速機はいらなくなるからです。

アイシンでは、相乗りサービス(ライドシェアサービス)の本格的運用を2019年4月から始めています。

同社の相乗りサービスでは、専用システムにより複数の客の目的地や利用時刻に応じて最適なルートを算出して、送迎する仕組みとなっています。

現在、各地の自治体などと連携して交通手段が乏しい地域などで運用しています。

今後は、相乗りサービスシステムを販売していくことも考えているようです。

以上のように、各社は経営環境の変化のなかで、生き残りのため様々なチャレンジをしていることがわかります。チャレンジなくして成功なし、ということです。

 

まとめ

トヨタ系列部品メーカーが多角化に挑戦

  • 多角化戦略とは

企業が成長するために方策の一つ

  • 系列部品メーカーの多角化事例

「深紫外線発光ダイオード(LED)」の開発、介護用歩行器開発販売、相乗りサービスなど様々な市場に参入(予定)しています。

 

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。