中小企業診断士の視点:メーカーが消費者にダイレクト販売するメリットとその影響

なぜメーカーがダイレクト販売するのかな?

メーカーが消費者にダイレクト販売する広告を、ちょくちょく目にします。

昨日も、この広告を目にしました。

そういえばサントリーはお酒だけでなく、このようなサプリメントも扱っているのですね。

テレビでも良くCMをやっているようです。

売り方は、テレビを見た消費者に直接売るダイレクト販売です。

 

そして、このネット販売も消費者に直接売るダイレクト販売です。

 

ダイレクト販売というと、家電業界に長くいた私にとって、思い浮かぶのはパソコンのダイレクト販売です。

例えば、エプソンではダイレクト販売をかなり前から行っていました。

 

エプソンのパソコン販売のメインは店頭販売だったはずですが、ダイレクト販売も行うことによって異なる流通チャネルを持ち、ダイレクト販売ではBTO(Build To Order)パソコンを扱うことが特徴となっていました。

 

BTOパソコンはCPUやOS、メモリ、記憶装置等をカスタマイズできます。

インターネットの進展、技術が進むことによって、パソコンのカスタマイズがオンライン上でも可能になり、パソコンのBTOメーカーもこうした背景をあって売上を伸ばしているようです。

 

私が現在使っているパソコンもマウスというBTOメーカーです。

 

今回は、サントリーのサプリメントの広告が目に入ったので、メーカーが消費者に直接商品を売るダイレクト販売のメリットと与える影響について書いていくことにします。

 

メーカーが消費者にダイレクト販売するメリットとその影響

記事の内容

  • メーカーがダイレクト販売するメリット(3つあります)
  • 与える影響(3つあります)

 

この記事は中小企業診断士のKAZUTOYOが書いています。

メーカーがダイレクト販売するメリット

①流通をすべて自社でコントロールできる

②顧客情報、売上情報がダイレクトで入手できる

③マーケティングも自社の意図通りにできる

 

①流通をすべて自社でコントロールできる

  • 自社の計画を実行しやすくなります

流通経路に別会社である卸や小売店が入ると、卸や小売店のことも考慮する必要があります。ある商品を大々的に販売促進しようとメーカーが考えても、卸や小売店が協力してくれないと事はうまく運びません。

 

協力してもらえるようなメリットをあれこれ考えて、メリットを供与しないと動いてくれないこともあります。

 

商品を購入してくれる消費者のことだけでなく、流通業者のことも考えて計画していく必要があるのです。そのためには、複数の卸や小売店に出向き商談を進めていく必要があります。ようするに協力してもらうためには根回しが必要なわけです。

これは、とても時間を要し、骨が折れ、気を使う仕事です。

当然、実行できるまでは時間がかかります

 

ですが、流通業者を介せず、直接消費者に売るダイレクト販売は、こうした仕事が省略できます。「とても時間を要し、骨が折れ、気を使う仕事」をしなくて済むのです。

消費者のことに集中していけば良いのです。

計画の中にこちらが自由にコントロールできない流通業者を入れなくてすみ、自社内の調整をやるだけなので計画はコントロールしやすくなります。

 

②顧客情報、売上情報がダイレクトに入手できる

  • 重要なのは情報を直接入手できる点です

メーカーが商品を店舗に流通させ、店舗で売っているだけだと、工夫しない限りメーカーは顧客情報を入手できません。

顧客情報は店舗に集約されるだけです。

メーカーとしては、今後のためにも商品を買っている人はどんな人か知りたいのですが、従来通りのやり方だとそれはできないのです。

 

また、商品の売上情報もすぐにははいってきません。ある商品が飛ぶように売れていても、従来はその情報は卸から注文が多く入るようになって、初めて気がつくという具合だったのです。

その結果、すごく売れているから増産して対応しようとしたときには既にブームは去っていた、ということもあったのです。

 

でもユニクロは、製造小売店ですが、何がよくて成功したのかというと、その理由の一つがお客の情報や売上情報がリアルタイムで入手できたことです。

ある商品が人気になると、それはすぐに製造部門に届き、増産対応ができます。人気商品を品切れさせることなく売ることが可能になるのです。

情報がいかに大切かということです。

 

③マーケティングも自社の意図通りにできる

  • PDCAも回しやすい

PDCAは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を回すことです。

これは製造部門だけでなく、マーケティングにおいても言えます。

例えば、ある商品を開発したとします。ニーズはあるが、いくらぐらいで売れるのかわからなかったとします。

実験的に複数の価格で市場に出すことを考えます。やってみなければわからないからです。

ですが、卸や小売業を通して市場に出す場合には、それは簡単ではありません。

まず、流通業者はそんな実験につきあっていらせません。商売だからです。何かのメリットがあれば別ですが。

つきあってもらうには、それなりのコストと時間がかかることになります。

 

ですが、ダイレクト販売なら簡単です。いろいろな実験を自社で好きなようにできます。コストもさほどかかりません。

例えばニーズを検討するために、ダイレクト販売なら、初めて購入する方には半額で売ります。という実験は簡単にできます。顧客情報も直接入手していますから、初めての購入か否かは瞬時にわかります。

 

ですが、これを小売店にやったもらおうとしたら相当大変です。

一つの例ですが、初めてのお客様分として仕入値を特別に下げた商品を小売店に卸します。

でも小売店は、初めてその商品を購入するお客にも、通常の価格で販売するかもしれません。その方が儲かりますから。もしくはミスや勘違いもあります。同じ商品に二つの価格というのは売る側にとってはやりにくいことはお分かりになると思います。

いずれにしても、相当大変らしいのは分かっていただけると思います。

でもお客に直接販売するダイレクト販売なら、簡単にできるのです。

マーケティングでPDCAを回すのもダイレクト販売なら、簡単なのです。

 

与える影響

①流通業者への影響

②物流業者への影響

③消費者への影響

 

①流通業者への影響

  • メーカーのダイレクト販売は流通業者に影響します

流通業は、単にものを右から左に流通させるだけでなく、価値を提供することが重要となってきます。

商品を提供するだけでなく、どんな価値を提供できるのか、ということです。

 

それは、例えば商品についてだったら商品の選び方などをしっかりお客に伝えているか、とういうことです。

また、別の観点から言えば、お店の店員は取り扱い商品について専門家であることが望まれます。ようするにプロであることが要求されているのです。

 

趣味の商品なら店員でなくても詳しい人も多いですが、商品の中にはそうでないものも圧倒的に多いのです。

例えば、家電製品で言えば洗濯機です。洗濯機を買いたいと思うときは、壊れたときや引っ越しをするときです。

最近の家電芸人は別として、不断から洗濯機が好きで、研究している方は多くないはずです。

ということは、ほとんど知識がない方が洗濯機が壊れたから、などという理由で急遽買いに来ることが多いのです。

そのときに、お客の利用環境やニーズを聞き出し、最適な商品を提案できることが必要です。それがプロです。

利用する時間帯が深夜で住居がマンションだとしたら、騒音や振動が少ないことが見た目よりも重要となってきます。そんなことは素人のお客様は購入するときには、わかっていません。

使ってみてあとから気が付くのです。

 

ですから、あらかじめ利用環境や時間帯を尋ねて、騒音や振動の説明をした上で最適な商品を提案できることが店員には求められます。それがプロではないでしょうか。

 

というようなことができれば、それはお客に価値を提供していることになります。一度利用したら、リピートするようになるでしょう。

でも、単にものを右から左に流して、何も価値を提供しない流通業は魅力がお客にとって魅力がなく、今後衰退していくでしょう。

 

②物流業者への影響

  • メーカーダイレクトの販売は物流業者を進化させる

メーカーの最終消費者へのダイレクト販売は物流を進化させます。アマゾン等ネット通販業者の売上高の上昇に伴って物流も進化しているのはわかっていました。

 

そして、最近ではメーカーへの返品なども面倒くさくなくできるようになっています。

私がBTOメーカーで購入したパソコンの修理依頼も面倒くさい作業をせずにすみました。あらかじめ、段ボールなどに梱包するのはこちらでならなくてはいけないと思っていましたが、物流業者が準備していました。昔のように消費者が面倒なことをやらなくも良いように、進化していることがわかりました。

 

これは、修理依頼してみて初めて知りました。

知らないところで、物流は進化しているのです。

 

③消費者への影響

  • 実店舗以外での買い物に抵抗がない消費者増加もプラス要因

テレビ通販は昔からありました。最近は多くの人がスマホを使うようになっていてスマホで物を購入することに抵抗がある人は少なくなっていると感じます。

アマゾンの売上が小売業ランキング5位にはいっているのはその証拠ともいえます。

当ブログ「日本の小売業ランキングベスト30」にランキング記事を掲載しています。

https://kazutoyoblog.com/japan-retail-industry-ranking

 

目には見えませんが、店に行かずにネットから直接購入するという販売チャネルは巨大なものとなっているのです。

ですからメーカーからネットを通じて直接商品を購入することに関してもハードルは低くなっているのです。

 

私に関していえば、家から出て店に行って買い物をすることの方がネットで購入するよりもハードルが高くなっています。

私とおなじような方は、今後も増えていくでしょう。

ネットで購入することに関していえば、アマゾンで買おうとメーカーで買おうと大した違いはないのです。

ほとんど同質です。同じパソコンで検索し、商品を選びクリックして購入しているだけなので違いはないのです。

このような環境になっているので、メーカーの消費者へのダイレクト販売は今後も増えていくと考えられます。

 

まとめ

メーカーがダイレクト販売するメリット

  • 流通をすべて自社でコントロールできる

自社の計画を実行しやすい

  • 顧客情報、売上情報がダイレクトで入手できる

重要なのは情報を直接入手できる点です

  • マーケティングも自社の意図通りにできる

PDCAも回しやすくなります

 

与える影響

  • 流通業者への影響

メーカーのダイレクト販売は流通業者に影響します

  • 物流業者への影響

メーカーダイレクトの販売は物流業者を進化させます

  • 消費者への影響

実店舗以外での買い物に抵抗がない消費者増加もプラス要因です。

  

ABOUTこの記事をかいた人

中高年のフリーランスの中小企業診断士です。独立する前は家電量販店の店員をやってました。1970年代から1980年代の洋楽・ロック等をよく聴いています。